この記事の要点
- 経済産業省は2018年の「DXレポート」で、古いシステムがDXの足かせになる問題を「2025年の崖」と表現しました
- 刷新の方式は1つではなく、システムごとに、そのまま移す・土台を替える・つくり直す・既製品に置き換えるなどを選びます
- 一度に入れ替えず、影響の小さい部分から段階的に移し、旧システムと結果を比べて確かめます
古くなったシステムを刷新するときは、まず現状を見える化し、システムごとに刷新の方式を選び、影響の小さい部分から段階的に移す、という順で進めます。すべてを一度に新しくする計画は、費用も危険も大きくなりやすいためです。
古くなったシステムの刷新の進め方
すべてを一度に新しくする計画は、費用も危険も大きくなりやすいためです
本記事では、経済産業省のレポートで示された問題の捉え方を確かめたうえで、刷新の方式の選び方と、移行の進め方を整理します。
レガシーシステムと「2025年の崖」
レガシーシステムとは、古い技術で作られ、長年の改修で複雑になり、中身を理解している人が限られてしまったシステムのことです。動いてはいるものの、変更に時間と費用がかかり、新しい技術やデータの活用を妨げる原因になります。
経済産業省は、2018年9月7日に「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表しました。既存のシステムの問題が足かせとなり、企業がDXを進められずに経営の改革が遅れると、経済的な損失が生じるおそれがあるとして、その状況を2025年の崖と表現しています。
出典:産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)(経済産業省。DXレポートの本文・概要を掲載)
2025年5月28日には、経済産業省が「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を取りまとめました。経済産業省、デジタル庁、IPAを事務局とする委員会の議論をもとにしたもので、ユーザー企業に対しては、システムの可視化と内製化を進めること、現行のやり方をそのまま引き継ぐ考え方を見直すこと、上流の工程を担う人材を育成・確保することを求めています。あわせて、経営層が自らのこととして、トップダウンで進めることを求めています。
出典:レガシーシステム脱却に向けた「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を取りまとめました(経済産業省、2025年5月28日)
2025年という年を過ぎても、古いシステムをどう扱うかという課題そのものが消えたわけではありません。経営の課題として、計画的に向き合うことが求められています。
まず、いまのシステムを見える化する
刷新の計画は、いまのシステムの一覧をつくるところから始めます。何がどこで動き、どの業務がどのシステムに依存しているかが分からないまま方式を決めると、移行の途中で想定外のつながりが見つかり、計画が崩れます。
一覧には、次のような項目をまとめます。
- システムの名前、使っている部署、利用者の数
- ほかのシステムとのつながりと、データの流れ
- 業務上の重要さ(止まったときの影響)
- OS・ミドルウェア・機器・保守契約の期限
- 設計書やソースコードがそろっているか、中身を分かる人がいるか
あわせて、長年の改修で積み重なった技術的負債の大きさや、使われていない機能も洗い出します。使われていない機能まで引き継ぐと、刷新の費用が膨らむため、残す機能を絞り込むことが、総括レポートのいう現行のやり方の見直しにもつながります。
刷新の方式を、システムごとに選ぶ
モダナイゼーションとは、古くなったシステムを、いまの技術や業務に合った形に作り替えることです。方式は1つではなく、システムの状態と業務上の重要さに応じて選びます。
| 方式 | 内容 | 向く場面 |
|---|---|---|
| リホスト | プログラムは変えず、動かす場所をクラウドなどに移す | 機器の保守の期限が近く、まず場所を移したい |
| リプラットフォーム | OSやデータベースなどの土台を新しくし、プログラムの変更は小さく抑える | 土台の保守の期限が理由で、業務の作りは変えなくてよい |
| リライト | 同じ機能を、新しいプログラム言語で書き直す | 古い言語を扱える人が減っている |
| リビルド | 業務の見直しも含めて、設計からつくり直す | 業務の変化に合わなくなっている、競争力にかかわる |
| 置き換え | SaaSなどの既製品に移る | 他社と同じやり方でよい業務 |
| 廃止・維持 | 使われていないものは止め、変える必要の小さいものは当面そのまま使う | 利用が少ない、近く役目を終える |
方式の呼び方や分け方は、資料や事業者によって違いがあります。名前より、プログラム・土台・業務のどこまでを変えるのかで整理すると、関係者の間で話がずれにくくなります。
リホストのように、いまのシステムをそのままクラウドに移し、その後に段階的に作り替える進め方は、クラウド移行の分野ではリフト&シフトとも呼ばれます。既製品に置き換えるかどうかの判断は、業務システムはSaaSで足りるか、個別に開発するかで取り上げています。
段階的に移す
一度にすべてを入れ替える進め方は、問題が起きたときの影響が大きく、元に戻すのも難しくなります。影響の小さい部分から、段階的に移すのが基本です。
- 新旧のシステムの間にデータを受け渡す窓口を設け、機能を少しずつ新しい側へ移す
- データの移行を本番の前に何度か試し、件数や金額の合計が一致するかを照合する
- 一定の期間、新旧のシステムに同じ入力をして、結果を比べる
- 問題が起きたときに旧システムへ戻す手順を、移行の前に決めておく
移す順番は、影響が小さく、効果が見えやすい部分から選ぶと、社内の理解を得やすくなります。途中で業務の担当者に確かめてもらう場面を計画に入れておくと、使い始めてからの手戻りを減らせます。
経営の判断として進める
刷新は、情報システムの部門だけで決められる話ではありません。刷新にかかる費用だけでなく、いまのシステムを使い続けた場合の費用と危険、たとえば保守の期限が切れたときの影響や、中身を分かる担当者が退職したときの影響と比べて判断します。
刷新するか、いまのシステムを使い続けるかを比べる
- 刷新する刷新にかかる費用
- 使い続ける使い続けた場合の費用と危険。たとえば、保守の期限が切れたときや、中身を分かる担当者が退職したときの影響
刷新は、情報システムの部門だけで決められる話ではなく、経営の判断として比べます
刷新によってデータを取り出しやすくなると、データ分析やAIの活用の土台にもなります。経営の目標から投資を決める考え方は、経営の目標から、AIとシステムへの投資を決めるをご覧ください。移す先のクラウドの選び方は、クラウド(AWS・Azure・Google Cloud)の選び方にまとめています。
当社のご支援
アメリア・テクノロジーのAI・DXコンサルティングでは、業務の流れ、使っているシステム、データの置き場所をうかがい、取り組む順番と計画をまとめます。新しいシステムの開発はソリューション提供、いまのシステムとのつなぎ込みと運用、内製化の支援はAIインテグレーションでお手伝いします。社内の業務の場に入り、要件定義から開発・運用までを一緒に進める形は、現場に入るFDEをご覧ください。
- モダナイゼーション
- レガシーシステム
- 2025年の崖
- クラウド移行
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 指針
経済産業省「DXレポート」(2018年9月)
既存のシステムの問題が足かせとなって企業がDXを進められないと、経済的な損失が生じるおそれがあることを示し、それを「2025年の崖」と表現した報告書です。
- 指針
経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月28日)
経済産業省、デジタル庁、IPAを事務局とする委員会の議論をもとに、レガシーシステムの問題と対処の方向をまとめた報告書です。ユーザー企業には、システムの可視化と内製化、現行踏襲の見直し、上流の工程を担う人材の育成・確保などを求めています。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
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