この記事の要点
- 経営の目標、KPI、業務、システムの順に逆算すると、投資の理由を説明しやすくなる
- 費用は導入の時点だけでなく、運用・保守・更新までを含めた総額で比べる
- 効果の測り方を先に決め、小さく試して、続けるかどうかを判断する時点を決めておく
AIとシステムへの投資は、「何ができるか」から考えるのではなく、経営の目標と、その達成を測るKPIから、変えるべき業務、その業務を支えるシステムへと逆算して決めます。そのうえで、費用は運用まで含めた総額で、効果は先に決めた測り方で確かめます。
KPIとは、目標に向けて進んでいるかを測るための指標のことです。売上の伸び、受注までの日数、問い合わせへの返答の時間など、目標と業務をつなぐ数字を選びます。
技術から考えると起きやすいこと
話題の技術や製品から投資を考えると、何のために使うのかがあいまいなまま導入が進み、効果を説明できなくなりがちです。
たとえば、生成AIのサービスを全社に配ったものの、どの業務で使うかが決まっておらず、使う人と使わない人に分かれてしまう、という形です。費用は毎月かかり続けるのに、効果を示す材料がないため、続けるかどうかの判断もできません。
技術の検討は大切ですが、順番としては、目標と業務の整理の後に置きます。
経営の目標から逆算する手順
目標、KPI、業務、課題、打ち手、システムの順に、上から下へ問いを立てていきます。
| 段階 | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 経営の目標 | 何年後に、どうなっていたいか | 既存の顧客からの受注を増やす |
| KPI | 何が動けば、目標に近づいたと分かるか | 見積もりの返答までの日数、受注率 |
| 業務 | KPIを動かしているのは、どの業務か | 見積もりの作成、過去の案件の調べもの |
| 課題 | その業務の何が、KPIを止めているか | 過去の資料が探しにくく、担当者に作業が集中している |
| 打ち手 | 課題をどう解くか | 過去の見積もりを検索できるようにし、下書きを自動で作る |
| システム | 打ち手に要る仕組みは何か | 社内文書の検索と生成AI、販売管理のシステムとの連携 |
逆算して決めた投資は、「この投資で、このKPIを動かし、目標に近づける」と一続きで説明できます。経営会議や金融機関への説明でも、筋道を示しやすくなります。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」も、経営ビジョンとDX戦略を結びつけることを求め、取り組みの柱の一つに「成果指標の設定・DX戦略の見直し」を挙げています。
費用は、総保有コスト(TCO)で見る
費用は、導入の時点の金額だけでなく、使い続ける間にかかる費用を合わせた総額で比べます。
TCO(総保有コスト)とは、システムを導入してから使い終えるまでにかかる費用の合計のことです。次のような費用を含めて考えます。
- 導入の費用:開発、設定、データの移し替え
- 利用の費用:サービスの利用料、AIの従量の料金、サーバーの費用
- 保守と運用の費用:不具合の対応、更新、監視、社内の担当者の時間
- 教育の費用:使う人への説明、手順書の作成
- 見直しの費用:将来の入れ替えや、提供の終了への対応
初期の費用が安く見えても、利用の人数やデータの量が増えると、毎月の費用が大きくなることがあります。使う量の見込みを置いて、数年分の総額で比べると判断を誤りにくくなります。
効果は、投資対効果(ROI)で見る
効果は、投資の額に対してどれだけの効果が得られたかというROI(投資対効果)の考え方で見ますが、何を効果として数えるかを先に決めておくことが前提です。
効果には、作業の時間の減少のように金額に置き換えやすいものと、ミスの減少、対応の質のそろい方、担当者の退職への備えのように、金額にしにくいものがあります。金額にしにくい効果も、件数や時間など測れる形に置き換えて記録します。
試す前の状態を測っておかないと、後で比べられません。導入の前に、対象の業務の時間や件数を記録しておきます。
作業の時間が減っても、空いた時間が別の仕事に使われなければ、経営の数字には表れません。時間が空いたら、その分を営業や顧客対応など、どの業務に振り向けるのかまで計画しておくと、効果がKPIの変化として見えやすくなります。
作業の時間が減ったあと、空いた時間をどう使うか
- 使い道を決めない空いた時間が別の仕事に使われなければ、経営の数字には表れません
- 振り向ける業務を決める営業や顧客対応などに振り向けると、効果がKPIの変化として見えやすくなります
比べるために、導入の前に対象の業務の時間や件数を記録しておきます
小さく始めて、判断の時点を決める
大きな投資を一度に決めず、範囲を絞って試し、続けるか、広げるか、やめるかを判断する時点をあらかじめ決めておきます。
小さく試す段階をPoCと呼びます。PoCを本番の利用につなげるには、評価の基準と、本番に進む条件を最初に決めておくことが大切です。詳しくはAIの試し(PoC)で終わらせないためにをご覧ください。
複数の候補があるときは、効果の大きさと、実現の難しさの2つの軸で並べると、取り組む順番を決めやすくなります。効果が見込め、難しさの低いものから始めると、早い段階で手応えを確かめられます。データにもとづいて判断する考え方はデータにもとづく経営とAIの役割分担でも取り上げています。
当社のご支援
アメリア・テクノロジーのAI・DXコンサルティングでは、事業計画・KPI・企業価値から逆算して、何をシステムやAIに任せるか、どの順番で進めるかを決め、開発の成果を経営の数字で確かめられるように、測り方を先に決めます。2〜4週間で優先順位と計画をまとめるAI活用の診断もご用意しています。
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- KPI
- ROI
- TCO
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 指針
経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」(2024年9月19日)
企業のDXの推進に向けて、経営者に求められる対応をまとめたものです。全体像を「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」として整理しており、DX認定の基準にもなっています。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
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