この記事の要点
- 日本のAIのルールは、推進の法律と、拘束力のない指針・ガイドラインを組み合わせた形です。
- 企業の実務では、AI事業者ガイドラインが社内の決まりをつくるときの主な手引きになります。
- 著作権と個人情報は、既存の法律の考え方を、文化庁と個人情報保護委員会の資料で確かめます。
日本のAIのルールは、AIの研究開発と活用を進めるための法律(AI推進法)を土台に、政府の計画と指針、拘束力のないガイドラインを組み合わせた形です。企業の実務では、総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」を手引きにしつつ、著作権や個人情報などの既存の法律を守る、という整理になります。
企業の実務では、AI事業者ガイドラインを手引きにしつつ、著作権や個人情報などの既存の法律を守ります。※ 個別の判断は専門家にご確認ください
ここでは、2026年10月時点の公式の資料をもとに、それぞれの要点を紹介します。個別の判断は、本文の最後のとおり専門家にご相談ください。
全体の見取り図
まず、主なルールと資料の位置づけを表にまとめます。
| 名前 | 出した機関 | 位置づけ |
|---|---|---|
| AI推進法 | 国会(法律) | 基本理念、国や事業者の責務、計画と本部を定める |
| 人工知能基本計画 | 政府(閣議決定) | 法律にもとづく国の施策の計画 |
| 適正性確保に関する指針 | 人工知能戦略本部 | 法律にもとづく、適正な研究開発と活用の指針 |
| AI事業者ガイドライン | 総務省・経済産業省 | 事業者向けの拘束力のない手引き |
| AIと著作権に関する考え方 | 文化審議会(文化庁) | 著作権法の当てはめ方の整理 |
| 生成AIサービスの利用に関する注意喚起 | 個人情報保護委員会 | 個人情報保護法の観点からの注意点 |
AI推進法
AI推進法とは、正式な名前を「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)という法律です。内閣府は「AI法」と略しています。2025年6月4日に公布され、一部を除いて同日に施行されました。人工知能基本計画と人工知能戦略本部に関する規定を含めて、2025年9月1日に全面的に施行されています。用語の説明はAI推進法の用語集にもまとめています。
条文の主な内容は次のとおりです。
- 第3条:基本理念。不正な目的や不適切な方法でのAIの研究開発・活用が、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などを助長するおそれがあることから、透明性の確保などの施策を講じることを定めています
- 第7条:AIを事業で活用する者(活用事業者)の責務。AIの活用で事業の効率化と高度化などに努めるとともに、国と地方公共団体の施策に協力しなければならないとしています
- 第13条:国が、国際的な規範の趣旨に沿った指針を整えることを定めています
- 第16条:国が、権利や利益の侵害が起きた事案を分析し、対策を検討して、事業者などに指導・助言・情報の提供を行うことを定めています
- 第18条・第19条:人工知能基本計画を定めること、内閣に人工知能戦略本部を置くことを定めています
条文には、事業者に対する罰則の規定はありません。
出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(e-Gov法令検索)
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)(内閣府)
人工知能基本計画
人工知能基本計画とは、AI推進法第18条にもとづいて政府が定める、AIの研究開発と活用を進めるための計画です。最初の計画は2025年12月23日に閣議決定され、2026年7月14日には第Ⅱ期の計画が閣議決定されました。
第Ⅱ期の計画の概要では、「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4つの基本的な方針を掲げています。中堅・中小企業や地方を含めたAIの活用の推進や、エージェント型のAIの活用も挙げられており、計画は当面毎年見直すとしています。
適正性確保に関する指針
「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」は、AI推進法第13条にもとづき、2025年12月19日に人工知能戦略本部が決定したものです。すべての主体の自主的な取り組みを促すもので、リスクにもとづく考え方や、柔軟で迅速な対応などを基本の方針にしています。
概要では、活用事業者が取り組む事項として、AIガバナンスを構築・運用すること、関係者との信頼のために透明性を確保すること、技術を用いて安全性を確保すること、データの持ち主などに配慮することが挙げられています。
出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針(内閣府)
AI事業者ガイドライン
AI事業者ガイドラインとは、総務省と経済産業省が、AIを安全・安心に活用するためのAIガバナンスの指針として示すものです。2024年4月19日に第1.0版が公表され、2026年3月31日に第1.2版が公表されました。ガイドライン自身が、拘束力のない「ソフトロー」であり、状況の変化に応じて更新する文書であると説明しています。
事業者を、AI開発者、AI提供者、AI利用者の3つに分け、それぞれが取り組む事項を示しています。第1.2版では、AIエージェントについての定義も示しています。多くの企業は「AI利用者」にあたり、社内の利用のルールをつくるときの参考になります。ルールの作り方は社内の生成AIの利用ルールの作り方で説明しています。
著作権:文化庁の考え方
著作権については、新しい法律ではなく、いまの著作権法をAIにどう当てはめるかが整理されています。文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」をまとめ、文化庁は2024年7月31日に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しました。
考え方では、AIの開発・学習の段階と、生成・利用の段階を分けて整理しています。
- 開発・学習の段階:著作権法第30条の4などの規定の当てはめ方
- 生成・利用の段階:生成したものが既存の著作物と似ているか(類似性)、既存の著作物にもとづいているか(依拠性)で、侵害にあたるかを判断する
- AIで生成したものが著作物にあたるか:人の創作的な関わりの有無で判断する
業務でAIに作らせた文章や画像を外に出すときは、既存の作品に似ていないかを確かめる手順を決めておきます。
個人情報:個人情報保護委員会の注意喚起
個人情報保護委員会は、2023年6月2日に生成AIサービスの利用についての注意喚起を公表しました。事業者に向けて、個人情報を含む指示を入力するときは利用目的の範囲内かを確かめること、個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法の規定に違反する可能性があるため、提供元が機械学習に使わないことなどを確かめることを求めています。
出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日)
企業が押さえておきたいこと
企業が押さえておきたいのは、次の4点です。
- AI推進法は、事業者に国の施策への協力を求めるもので、具体的な取り組みはガイドラインや指針を手引きにする
- 社内の利用のルールは、AI事業者ガイドラインの「AI利用者」の事項を参考につくる
- 著作権と個人情報は既存の法律が適用されるため、文化庁と個人情報保護委員会の資料で確かめる
- 計画とガイドラインは更新されるため、公式の資料の新しい版を定期的に確かめる
本記事は2026年10月時点の公式の資料にもとづく一般的な説明です。個別の事案や契約の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。
当社のご支援
アメリア・テクノロジーは、生成AIを社内で使うときのルール、情報の扱い、担当の決め方を、会社の実情に合わせて整えるお手伝いをしています。詳しくはAI・DXコンサルティングをご覧ください。
- AI推進法
- AI事業者ガイドライン
- 著作権
- 個人情報
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 法令
AI推進法 第7条(活用事業者の責務)
AIを事業活動で活用しようとする者(活用事業者)は、AIの活用による事業活動の効率化・高度化や新産業の創出に努めるとともに、国と地方公共団体が行う施策に協力しなければならないとしています。
- 指針
人工知能戦略本部「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(2025年12月19日決定)
AI推進法にもとづいて設けられた人工知能戦略本部が決定した、AIの研究開発と活用を適正に進めるための指針です。内閣府のページでは、関係する府省庁のガイドラインや国際的な規範もあわせて案内しています。
- 指針
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版(2026年3月31日))
AIを安全・安心に活用するため、AIの開発・提供・利用に関わる事業者が取り組む事項をまとめた指針です。事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」に分けて示しています。拘束力のない文書で、状況の変化に応じて更新されています。
- 指針
文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)
いまの著作権法をAIにどう当てはめるかについて、AIの開発・学習の段階と、生成・利用の段階に分けて考え方を整理したものです。
- 指針
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)
生成AIサービスを使うときの個人情報の扱いの注意点です。事業者には、個人情報を含む指示の入力が利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめることや、入力した個人データをサービスの提供者が機械学習に使わないことなどを確かめることを求めています。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
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