この記事の要点
- ルールは禁止の一覧ではなく、安心して使える範囲を示すものとして作る
- 入力してよい情報は、社内の情報の区分に合わせて決めると現場が迷いにくい
- AI事業者ガイドライン、個人情報保護委員会の注意喚起、文化庁の考え方を参照する
社内の生成AIの利用ルールは、対象、入力してよい情報、使ってよいサービス、確認の手順、著作権と個人情報、教育と見直しの6つの項目を決めると、現場で使える形になります。禁止することを並べるのではなく、「この範囲なら安心して使える」を示すことが目的です。
生成AIとは、文章や画像などを新しく作り出すAIのことです。使い方しだいで業務の手間を減らせる一方、情報の漏えいや、誤った内容をそのまま使ってしまうリスクもあります。
利用ルールが要る理由
ルールがないと、社員がそれぞれの判断で個人のアカウントや無償のサービスを使い、会社が把握できないところで情報が扱われるおそれがあります。
逆に、一律に禁止すると、業務に役立つ使い方まで止まり、かえって隠れて使われることにもなりかねません。使ってよい範囲と手順をはっきりさせることで、社員は安心して使え、会社はリスクを管理できます。AIの利用を組織として管理する考え方はAIガバナンスとも呼ばれます。
参考にする公的な資料
ルールを作るときは、国の指針と、監督官庁の注意喚起を一次情報で確かめます。
AI事業者ガイドライン
総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」をまとめ、2026年3月31日に第1.2版を公表しています。AIを開発する事業者、提供する事業者、業務で利用する事業者のそれぞれに向けて、取り組むべきことを整理しています。生成AIを業務で使う会社は、主に利用する事業者の立場で参照します。
個人情報保護委員会の注意喚起
個人情報保護委員会は、2023年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました。事業者が個人情報を含む指示(プロンプト)を入力する場合は、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確かめること、入力したデータが応答の出力以外の目的、たとえばAIの学習に使われないかを確かめることなどを求めています。
出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日)
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」
文化審議会著作権分科会の法制度小委員会は、2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、文化庁が公表しています。2024年7月31日には、事業者向けの「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表されています。
法律とガイドラインの全体像は日本のAIに関する法律とガイドラインの要点にまとめています。
ルールに入れる6つの項目
6つの項目で決めることを表にまとめます。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 対象 | だれが、どの業務で使うか。派遣の方や委託先を含めるか |
| 入力してよい情報 | 情報の区分ごとに、入力してよいか、条件つきか、禁止か |
| 使ってよいサービス | 会社が認めたサービスと契約の形、申請の手順 |
| 確認の手順 | 出力をだれが、どう確かめてから使うか |
| 著作権と個人情報 | 生成物を社外に出すときの確認、個人情報の扱い |
| 教育と見直し | 研修の方法、相談の窓口、ルールを見直す時期 |
入力してよい情報
入力してよい情報は、社内の情報の区分に合わせて決めると、現場が迷いにくくなります。たとえば、公開済みの情報は入力してよい、社内向けの情報は会社が認めたサービスに限って入力してよい、顧客の個人情報や未公開の経営情報、取引先から預かった秘密情報は入力しない、という分け方です。区分ごとに具体的な例を添えると、判断しやすくなります。
入力してよい情報を、社内の情報の区分で分ける(分け方の例)
- 公開済みの情報入力してよい
- 社内向けの情報会社が認めたサービスに限って入力してよい
- 顧客の個人情報など入力しない。未公開の経営情報、取引先から預かった秘密情報も同じ
区分ごとに具体的な例を添えると、判断しやすくなります
使ってよいサービス
会社として使ってよいサービスを決め、法人向けの契約で、入力したデータが学習に使われるかどうか、保存の期間、管理者が利用の状況を確かめられるかを確認します。無償の版と法人向けの版で、データの扱いが違うことがあります。新しいサービスを使いたいときの申請の手順も決めておきます。
確認の手順
生成AIの出力には、もっともらしい誤り(ハルシネーション)が含まれることがあります。社外に出す文書、数字、法令や契約にかかわる内容は、人が元の資料にあたって確かめてから使うことを、ルールに明記します。
著作権と個人情報
生成物を社外に出すときは、既存の作品や他社の文章に似ていないかを確かめます。特定の作家や作品をまねるような指示を避けることも、ルールに入れておきます。個人情報は、上の注意喚起をふまえ、入力の可否と、委託先としてのサービスの扱いを確かめます。
教育と見直し
ルールは配るだけでは定着しないため、使い方の研修と、迷ったときの相談の窓口を用意します。生成AIのサービスと関係する指針は改定が続いているため、半期や年度など、見直す時期を決めておきます。指示の書き方は生成AIへの指示(プロンプト)の書き方の原則が参考になります。
作り方の手順
- 社内でいま生成AIがどう使われているかを聞き取る
- 情報システム、法務、人事、現場の担当でルールの案をつくる
- 公的な資料と、使うサービスの利用規約を確かめ、案を直す
- 一部の部署で試し、分かりにくい点を直してから全社に広げる
- 研修を行い、相談の窓口と見直しの時期を決める
ルールで防ぎにくい、外部からの攻撃や情報の漏えいへの技術的な対策は、生成AIのセキュリティで扱っています。
当社のご支援
アメリア・テクノロジーのAI・DXコンサルティングでは、生成AIを社内で使うときのルール、情報の扱い、担当の決め方を、会社の実情に合わせて整えるお手伝いをしています。ルールづくりとあわせて、どの業務から使い始めるかの優先順位も整理できます。社内の方への使い方のレッスンはAIタイムシェアでも承ります。
- 生成AI
- 利用ルール
- 情報管理
- AIガバナンス
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 法令
個人情報保護法 第18条(利用目的による制限)
あらかじめ本人の同意を得ないで、特定した利用目的の達成に必要な範囲の外で個人情報を取り扱ってはなりません。法令にもとづく場合など、例外も定められています。
- 指針
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版(2026年3月31日))
AIを安全・安心に活用するため、AIの開発・提供・利用に関わる事業者が取り組む事項をまとめた指針です。事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」に分けて示しています。拘束力のない文書で、状況の変化に応じて更新されています。
- 指針
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)
生成AIサービスを使うときの個人情報の扱いの注意点です。事業者には、個人情報を含む指示の入力が利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめることや、入力した個人データをサービスの提供者が機械学習に使わないことなどを確かめることを求めています。
- 指針
文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)
いまの著作権法をAIにどう当てはめるかについて、AIの開発・学習の段階と、生成・利用の段階に分けて考え方を整理したものです。
- 指針
文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)
「AIと著作権に関する考え方について」をもとに、AIに関わる事業者が著作権の観点から確かめたい点をまとめた資料です。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。