MANAGEMENT

M&Aの前に整えておきたい、データとシステムのこと

会社の譲渡や買収を考え始めたら、システムの一覧、契約とライセンス、データの所在、属人化の4つを整理しておくと、調査への対応が進めやすくなり、統合の見通しも立てやすくなります。整え方の順番と、確かめる点を説明します。

この記事の要点

  • 使っているシステムと契約の名義を一覧にすると、調査の質問に答えやすくなる
  • データがどこにあり、だれが触れられるかを整理しておくと、情報の扱いの不安を減らせる
  • 1人しか知らない運用は、手順書と権限の見直しで、引き継げる形にしておく

会社の譲渡や買収を考え始めたら、まず「使っているシステムの一覧」「契約とライセンス」「データの所在」「属人化した運用」の4つを整理しておくと、後の調査と統合が進めやすくなります。大がかりな刷新は要りません。いまの状態を、ほかの人が読んで分かる形にしておくことが目的です。

譲渡や買収の検討が進むと、相手方から、システムについての資料の提出や質問への回答を求められます。そのときに慌てて集めると、回答が遅れたり、確かめきれない点が残ったりします。ふだんの管理の延長で、少しずつ整えておくのが現実的です。

なぜ、M&Aの前にシステムを整えるのか

システムの状態は、事業を続けられるかどうかと、買収の後にかかる費用の見込みに直接かかわるためです。

基幹の業務を支えるシステムが古く、保守の契約が切れている場合や、管理者のアカウントが退職した人の名義のままになっている場合は、譲受側から見ると、引き継いだ後に手当てが要る点になります。こうした点は、ITデューデリジェンスと呼ばれる調査で確かめられます。調査で何を見るかはITデューデリジェンスでは何を見るのかにまとめています。

整理しておくことは、譲渡の側にとっても、自社の事業の価値を正しく伝える準備になります。

システムの一覧をつくる

最初に、会社で使っているシステムとサービスを、漏れなく一覧にします。

基幹システムや会計のように目立つものだけでなく、部署ごとに契約しているSaaS、表計算のマクロ、社内のサーバーで動く小さなツールも含めます。現場で使われているのに、管理部門が把握していないものが見つかることがよくあります。

項目書いておくこと
名前と用途どの業務で、だれが使っているか
提供の形SaaS、自社のサーバー、クラウド、作り込みのソフトなど
契約と費用契約の名義、期間、更新日、月額や年額
担当社内の管理者、保守を頼んでいる会社
つながりほかのシステムとのデータの受け渡し

一覧は完全でなくてかまいません。分からない点は「不明」と書き、確かめる担当を決めておきます。

一覧をつくるときは、請求書やクレジットカードの明細から、毎月払っているサービスを拾い出すと漏れを減らせます。あわせて、使われていないのに契約が続いているサービスも見つかり、費用の見直しにもつながります。

契約とライセンスを確かめる

契約の名義と条件を確かめ、会社の持ち主が変わっても使い続けられるかを見ておきます。

  • サービスの契約が会社の名義になっているか(社員個人のアカウントやクレジットカードで払っていないか)
  • ソフトウェアのライセンスの数と、実際に使っている人数が合っているか
  • 保守の契約が切れていないか、提供の終了が予定されている製品はないか
  • 自社で開発したソフトの著作権が、開発を頼んだ会社と自社のどちらにあるか
  • 自社のソフトに組み込んだオープンソースソフトウェアのライセンスの条件

契約によっては、会社の支配権が変わるときに、相手方への通知や承諾を求める条項が入っていることがあります。該当しそうな契約は早めに洗い出しておきます。個別の契約の読み方は、弁護士などの専門家にご相談ください。

データの所在と扱いを整理する

どのデータが、どこに、だれが触れられる形で置かれているかを書き出します。

顧客の情報、取引の記録、従業員の情報、図面や仕様書などのデータは、基幹システムの中だけでなく、共有のフォルダやメール、個人のパソコンにも散らばっていることがあります。置き場所が分かれば、バックアップが取れているか、退職した人のアカウントが残っていないか、社外と共有したままのファイルがないかも確かめられます。

個人情報を扱っている場合は、利用目的の通知や公表、委託先の管理の状況もあわせて整理します。データの扱いがきちんと説明できることは、譲受側の安心につながります。

属人化した運用を、引き継げる形にする

1人の担当者しか知らない運用は、手順書と権限の見直しで、ほかの人も対応できる形にしておきます。

たとえば、月末の締めの処理、サーバーの更新、取引先とのデータのやり取りなどが、特定の人の経験に頼っている場合です。管理者のパスワードをその人だけが知っている、という状態も見直しの対象です。

  1. 担当者に、定期的な作業と、トラブルのときの対応を聞き取る
  2. 手順を文書にし、ほかの人が一度その手順で作業してみる
  3. 管理者の権限を複数の人に分け、パスワードは会社として管理する

属人化には、記録の残っていない改修や古い作りのまま動いている部分、つまり技術的負債が隠れていることも多く、整理の過程で見えてきます。すぐに直せないものも、一覧に書いておけば説明の準備になります。

当社のご支援

アメリア・テクノロジーは、グループのフロレンティナと連携し、譲渡の前の磨き上げとして、システムとデータの整理をお手伝いします。システムの一覧づくりから、属人化した運用の文書化、譲受の後の統合の見通しまで、事業の状況に合わせて進めます。詳しくはフロレンティナとの連携とAI・DXコンサルティングをご覧ください。

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この記事に出てくる用語

この記事を書いた人

石田 誠 フロレンティナ 取締役CTO

インターネットの黎明期から、ホスティング事業の立ち上げや、インフラ・セキュリティのプロジェクトに携わってきました。現在は、AWS・Azure へのクラウド移行の支援と、業務アプリケーションの要件定義から実装までを担っています。

このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。

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