MANAGEMENT

買収の後のシステム統合(PMI)をどう進めるか

買収の後のシステム統合は、業務ごとに「統合」「併存」「移行」のどれを選ぶかを決め、アカウントと権限、会計、人事、顧客データの順に、止めてはいけない業務を守りながら進めます。選び方と順番の考え方を説明します。

この記事の要点

  • システムを一度にそろえようとせず、業務ごとに統合・併存・移行を選ぶ
  • 最初の期間は、現状の把握と、止めてはいけない業務・セキュリティの手当てに絞る
  • 会計・人事・顧客データは、締めと法令にかかわる順に計画を立てる

買収の後のシステム統合は、すべてを一度にそろえるのではなく、業務ごとに「一方の会社のシステムに寄せて一つにする(統合)」「いまのまま残してつなぐ(併存)」「両社で新しい仕組みに移る(移行)」のどれを選ぶかを決め、順番をつけて進めます。最初に急ぐのは、統合そのものより、現状の把握と、止めてはいけない業務を守ることです。

PMIとは、M&Aの成立の後に行う統合の取り組みのことです。経営の方針、組織、業務、システムまで範囲は広く、システムはその土台になります。

システムの統合が、PMIの中で重く見える理由

会社ごとに業務の進め方とシステムが違い、数字や情報を一つに見られないと、グループとしての判断がしにくくなるためです。

中小企業庁がまとめた「中小PMIガイドライン」では、M&Aの後の取り組みを整理し、人事・労務、会計・財務、法務と並んで、ITシステムを管理機能の分野の一つに挙げています。また、ガイドラインの基礎編は、M&Aの成立から100日〜1年程度までの期間の取り組みと注意点を扱っています。

出典:PMIを実施する(中小企業庁)

一方で、システムの入れ替えは現場の負担が大きく、急ぎすぎると業務が止まる恐れがあります。何を、どの順番で、どこまでそろえるかを決めることが、計画の中心になります。

統合・併存・移行の選び方

業務の違いの大きさ、システムの状態、統合で得たい効果の3つを見て、業務ごとに選びます。

選び方内容向いている場面
統合一方の会社のシステムに寄せて一つにする業務が近く、一方のシステムに余力と拡張性がある
併存それぞれのシステムを残し、データだけをつなぐ業務の進め方が大きく違う、当面は別の会社として動く
移行両社で新しい共通の仕組みに移る両方のシステムが古い、グループで仕組みをそろえたい

統合は、寄せる側のシステムに合わせて業務を変えるため、現場への説明と教育に時間を取ります。併存は早く始められますが、データの受け渡しの仕組みと、その保守が要ります。新しい仕組みへの移行は効果が大きい反面、費用と期間がかかり、買収の直後に選ぶと負担が重くなりがちです。

「まず併存してデータをつなぎ、落ち着いてから統合や移行を考える」という段階を踏む形も、よく選ばれます。

段階を踏む形:まず併存し、落ち着いてから考える

まず併存それぞれのシステムを残し、データをつなぐ
落ち着いてから統合や移行を考える

新しい仕組みへの移行は効果が大きい反面、買収の直後に選ぶと負担が重くなりがちです

最初の期間に決めること

最初の期間は、統合の作業を急ぐより、現状をつかみ、守るべきものを守ることに力を割きます。

  • 譲受側と譲渡側のシステムの一覧と、データのつながり
  • 月末の締め、給与の支払い、受注と出荷など、止めてはいけない業務
  • 管理者のアカウント、退職者のアカウント、社外との共有の状況
  • 保守の契約の期限と、担当者の引き継ぎ
  • 業務ごとに、統合・併存・移行のどれを目指すかの方針

期間の長さは、会社の規模や統合の深さで変わります。日数の目安に合わせるより、上の項目を確かめ終えたかどうかで、次の段階に進むかを判断するほうが確実です。

会計・人事・顧客データの統合の順番

アカウントと権限を先に整え、そのあと会計、人事、顧客データの順に進めるのが、無理の少ない進め方です。

統合を進める順番(無理の少ない進め方)

アカウントと権限先に整える
会計
人事
顧客データ

アカウントと権限

だれがどのシステムに入れるかを最初に確かめます。グループで使う仕組みにつなぐ前に、権限の整理と多要素認証などの手当てを済ませておくと、統合の作業そのものの安全も保てます。

会計

グループの数字を見られるようにすることが、経営の判断の出発点になります。勘定科目や部門の分け方の対応表をつくり、決算期や締めの日程の違いも確かめます。システムを入れ替える前に、まず数字の集め方をそろえる方法もあります。

人事・給与

給与の計算は、法令と従業員の生活に直接かかわるため、誤りが許されません。就業規則や制度の統合の方針が決まってから、システムの切り替えの時期を決めます。切り替えの前後で、並行して計算して結果を突き合わせる期間を設けると安全です。

顧客・取引先のデータ

同じ取引先が両社に別の名前やコードで登録されていることが多く、マスターデータの名寄せが要ります。重なる取引先への連絡や請求が混乱しないよう、営業の担当とも調整しながら進めます。両社のシステムをつなぐ場合は、API連携などの方法を使います。いまのシステムとAIや外部のサービスをつなぐ方法はいまの基幹システム・SaaS と AI をつなぐ方法をご覧ください。

現場への説明を計画に入れる

システムの統合は、現場の人の仕事の仕方を変えます。何がいつ変わるか、なぜ変えるのか、困ったときにだれに聞けばよいかを、切り替えの前に伝えておきます。

買収の前の調査で分かったことは、統合の計画の材料になります。調査の観点はITデューデリジェンスでは何を見るのかにまとめています。

当社のご支援

アメリア・テクノロジーは、グループのフロレンティナと連携し、譲受の後の統合として、会社ごとに異なるシステムや業務をつなぎ、グループとして動ける状態にするお手伝いをします。現状の整理と方針づくりから、データの連携、運用までを受け持ちます。詳しくはフロレンティナとの連携とAIインテグレーションをご覧ください。

  • PMI
  • M&A
  • システム統合
  • 基幹システム

この記事に出てくる用語

この記事を書いた人

石田 誠 フロレンティナ 取締役CTO

インターネットの黎明期から、ホスティング事業の立ち上げや、インフラ・セキュリティのプロジェクトに携わってきました。現在は、AWS・Azure へのクラウド移行の支援と、業務アプリケーションの要件定義から実装までを担っています。

このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。

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