この記事の要点
- つなぎ方は、API・ファイル連携・iPaaS・RPAの中から、相手のシステムが用意している窓口に合わせて選びます
- AIに与える権限は業務に要る範囲に絞り、いつ・だれの依頼で・何をしたかをログに残します
- 読み取りだけから始め、人の確認を挟んだ書き込み、条件を決めた自動の処理へと段階的に広げます
AIを業務で使い続けるには、AIの答えを、いまの基幹システムやSaaSのデータと行き来させる仕組みが要ります。つなぎ方には、API、ファイル連携、iPaaS、RPAの4つがあり、どれを使うかは、相手のシステムが用意している窓口で決まります。
つなぐ方法と同じくらい大切なのが、AIにどこまでの操作を許すかという権限の設計と、何が起きたかを後から確かめられる記録です。この記事では、4つのつなぎ方と、権限・ログの考え方、段階的に広げる進め方を順に説明します。
なぜAIをシステムにつなぐのか
人がAIの画面とシステムの画面の間で、データを写して行き来している状態では、手間が残り、転記の誤りも起きるためです。
たとえば、次のような使い方は、システムとつながってはじめて業務の流れに組み込めます。
- 注文書をAIで読み取り、その結果を販売管理のシステムに登録する
- お客様からの問い合わせに、顧客管理のシステムの契約の情報を参照して回答の案をつくる
- 基幹システムの出荷の記録から、翌週の需要を予測して画面に出す
いずれも、AIの部分だけをつくっても、データの受け渡しを人が担う限り、効果は限られます。
AIとシステムの間のデータの受け渡し
人が写している状態
システムとつながった状態
業務の流れに組み込めます
AIの部分だけをつくっても、データの受け渡しを人が担う限り、効果は限られます
4つのつなぎ方
相手のシステムがAPIを公開していればAPIを、なければファイル連携やiPaaS、画面の操作しか手段がなければRPAを検討する、という順で考えます。
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| API | 相手のシステムがAPIを公開している | 認証の方式、呼び出しの回数の制限、仕様の変更 |
| ファイル連携 | APIがなく、1日1回などの間隔で足りる | 受け渡しの時刻、文字コード、失敗したときのやり直し |
| iPaaS | 複数のSaaSをつなぐ、変更が多い | 料金のかかり方、処理が増えると全体を見通しにくい |
| RPA | 画面の操作しか手段がない | 画面の変更で止まりやすい、件数が多いと時間がかかる |
API
APIとは、システムが外部からの依頼を受け付けるために用意した、決まった形の窓口のことです。データの取得や登録を、プログラムから確実に行えるため、使えるならまず候補にします。相手の仕様が変わることがあるため、事業者の更新の案内を追う担当を決めておきます。
ファイル連携
ファイル連携とは、CSVなどのファイルを決まった場所に出力し、もう一方のシステムが取り込む方法です。APIを持たない古いシステムとも組み合わせやすく、夜間にまとめて受け渡す使い方に向いています。取り込みに失敗したときに、だれが気づき、どうやり直すかを決めておかないと、データの抜けに気づかないまま進むことがあります。
iPaaS
iPaaSとは、複数のクラウドサービスの間でデータを受け渡す処理を、画面上の設定で組み立てられるサービスのことです。SaaSどうしをつなぐ場面や、AIのサービスを処理の途中に挟む場面で使いやすい方法です。手軽な反面、処理が増えると、どこで何が起きているかを追いにくくなるため、一覧と担当を管理します。
RPA
RPAとは、人がパソコンで行う画面の操作を記録し、ソフトウェアに自動で行わせる仕組みのことです。APIもファイルの出力もないシステムでも使えますが、画面の配置が変わると止まりやすく、ほかの方法がないときの手段と考えます。
AIエージェントからつなぐ場合
AIエージェントに社内のシステムを操作させる場合は、AIと外部のツールをつなぐための共通の決まりであるMCPを使う方法もあります。ただし、つなぎ方が変わっても、下の権限とログの考え方は同じです。AIエージェントの仕組みと注意はAIエージェントとはをご覧ください。
権限とログの設計
AIに渡す権限は業務に要る範囲に絞り、AIが行った操作をすべて記録します。つなぐ方法を決めるのと同時に設計しておきます。
- AI専用のアカウントを用意し、人のアカウントを流用しない
- 読み取りと書き込みの権限を分け、対象のデータの範囲も絞る
- 使う人の権限を引き継ぎ、AIを通すことで本来見られないデータが見えてしまわないようにする
- APIキーなどの秘密の情報は、プログラムに直接書かず、専用の保管の仕組みで管理する
- 外部のAIサービスにデータを送る場合は、入力したデータが学習に使われるか、どれだけ保存されるかを契約で確かめる
ログには、いつ、だれの依頼で、AIが何を読み、何を書いたかを残します。AIへの入力と出力も、社内の情報の扱いの決まりの範囲で残しておくと、誤りが起きたときに原因をたどれます。
あわせて、AIが読み込む文書やメールに、AIへの不正な指示が紛れ込む危険にも備えます。書き込みの権限を持つAIほど、影響が大きくなります。対策の考え方は生成AIのセキュリティ:情報の漏えいとプロンプトインジェクションで取り上げています。
段階的に広げる
最初から自動で書き込ませず、読み取りだけ、人の確認つきの書き込み、条件を決めた自動の処理、の順で広げます。
- 読み取りだけ:AIはシステムのデータを参照するだけにし、結果は人が見て使う
- 下書きの書き込み:AIが登録の案をつくり、人が確かめてから確定する
- 条件を決めた自動化:誤りの影響が小さく、確認の実績が積み上がった処理から、人の確認を外す
各段階で、誤りの割合と、人の確認にかかる手間を測り、次の段階に進むかを判断します。本番のデータでいきなり試さず、検証用の環境で動きを確かめることと、誤って登録したときに取り消す手順を用意しておくことも欠かせません。
つなぐ前に整えておくこと
つなぐ作業そのものより、データの意味と持ち主をそろえる作業に時間がかかることがあります。
- データの持ち主:同じ顧客や商品の情報が複数のシステムにあるとき、どちらの値を正とするか
- 項目の意味:「顧客」「受注日」などの言葉が、システムごとに違う意味で使われていないか
- 止まったときの扱い:相手のシステムが止まったときや、AIが誤ったときに、だれに知らせ、どう業務を続けるか
- 運用の担い手:つないだ後の監視や、相手の仕様の変更への対応をだれが受け持つか
SaaSと個別の開発をどう組み合わせるかは、業務システムはSaaSで足りるか、個別に開発するかにまとめています。
当社のご支援
当社のAIインテグレーションでは、基幹システム・会計・販売管理・グループウェアなどとデータをつなぎ、二重入力を減らす仕組みをつくります。つないだ後も、使われ方と精度を見ながら改善を続け、社内で運用を続けられるよう手順書の整備などの内製化も支えます。注文書を読み取って基幹システムへつなぐ例などは、AI開発の例をご覧ください。
- システム連携
- API
- iPaaS
- RPA
この記事に出てくる用語
このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。