この記事の要点
- AIが担うのは、データの整理・予測・選択肢の比較など、判断の材料をそろえる仕事
- 目的を決め、価値観に照らして判断し、人を動かすのは経営者の仕事
- AIを生かす前提は、社内のデータが整い、数え方の定義がそろっていること
AIは、データの整理や予測、選択肢の比較という点で、経営参謀の役割の一部を担えます。ただし、目的を決め、判断し、責任を負うのは人です。AIと人の役割を分けて考えると、AIを経営に生かしやすくなります。
経営参謀とは、経営者のそばで情報を集め、選択肢を示し、判断を助ける役割のことです。データにもとづく経営とは、経験や勘だけに頼らず、売上・顧客・在庫・人員などのデータを根拠に判断する経営のことです。社内外のデータが増え、人の手だけでは整理しきれなくなるなかで、AIはデータの整理と分析を助ける道具になります。
AIが経営で担えること
AIが担えるのは、判断の材料をそろえる仕事です。データの整理、予測、選択肢の比較、異変の早い発見の4つに分けられます。
データを整理し、見える形にする
部門ごとに散らばった売上や受注の記録、日報、問い合わせの内容をまとめ、要約や集計の形にします。問い合わせや日報、議事録のような文章のデータから、よく出る話題や不満の傾向を拾うのは、生成AIが得意な作業です。
予測する
需要予測とは、過去のデータなどから、先の期間にどれだけ売れるか、どれだけの注文が来るかを見積もることです。過去の受注や販売の記録に、季節、天気、催しの予定などを組み合わせて見込みを出します。予測には誤差があるため、幅をもった見込みとして使います。予測が外れたときに理由を振り返ると、見ていなかった要因に気づくきっかけにもなります。
選択肢を比べる
「価格を変えたら」「仕入れの量を変えたら」など、いくつかの案について、前提を置いたうえで結果の見込みを並べます。前提を変えて何度も計算し直せるので、人だけで検討するより多くの案を比べられます。ただし、結果は置いた前提とデータの範囲に左右され、過去にない出来事には弱い点に注意が要ります。
異変に早く気づく
売上や在庫、解約の動きなどを日々見て、いつもと違う動きがあれば知らせる使い方もあります。人が見落としやすい小さな変化を拾い、早めに手を打つきっかけになります。
人が担い続けること
目的を決めること、価値観に照らして判断すること、決めたことを実行するために人を動かすことは、経営者の仕事として残ります。
- 目的を決める:AIは「なぜ売上が落ちたか」の手がかりを示せても、「だから、どこへ向かうか」は決めません
- 価値観に照らして判断する:利益の見込みが高い案でも、顧客や取引先との信頼、社会からの見られ方、社員への影響をふまえて選ぶのは人です
- 人を動かす:方針を説明し、納得してもらい、実行を支えることは、データの分析だけでは進みません
AIの出す予測や分析にも、誤りや偏りがあります。数字の根拠を尋ね、元のデータを確かめたうえで判断に使う姿勢が欠かせません。いまのAIの得手・不得手はいまのAIが得意なこと・苦手なことでまとめています。
| 場面 | AIが担うこと | 人が担うこと |
|---|---|---|
| 情報を集める | データの集計・要約・傾向の発見 | どのデータを見るかを決める |
| 先を見通す | 需要や売上の予測、案ごとの比較 | 前提が妥当かを確かめる |
| 決める | 判断の材料を示す | 目的に照らして決め、責任を負う |
AIを経営に生かすための準備
AIを経営に生かす前提は、データが整っていること、数え方の定義がそろっていること、見る指標が決まっていることの3つです。
- データの置き場所を把握する:売上、顧客、在庫などのデータが、どのシステムや表計算のファイルにあるかを洗い出す
- 定義をそろえる:「売上」「顧客数」などの数え方が部門で違うと、AIの分析も食い違います
- 見る指標を決める:経営の目標に照らして、毎月どの数字を見て判断するかを決める
- 小さく試す:需要予測や問い合わせの分析など、1つのテーマで試し、判断に役立つかを確かめる
データが表計算のファイルに散らばっている会社は少なくありません。最初からすべてを整える必要はなく、試すテーマに必要なデータから整えていけば足ります。
データの扱いの決まりも、準備に入ります。顧客の個人情報や取引の条件など、外部のAIのサービスに入力してよい情報とそうでない情報を分け、法人向けの契約や社内の環境で扱う範囲を決めておきます。
M&A・事業承継の前後のデータの整理
会社や事業を引き継ぐ前後には、データの整理がとりわけ大事になります。取引先、契約、在庫、業務の手順などを、引き継ぐ側が理解できる形に整えておくと、引き継いだ後の業務の見直しや、AIの活用にも進みやすくなります。どの業務がどのデータに支えられているかを書き出しておくと、引き継いだ後に何から手をつけるかも決めやすくなります。
当社のご支援
当社のAI・DXコンサルティングでは、経営の目標から逆算して、どの判断にどのデータとAIを使うかを整理します。需要予測などの具体的な例はAI開発の例をご覧ください。M&A・事業承継の前後のデータの整理やAI・DXについては、グループ会社のフロレンティナと連携してご支援します(フロレンティナとの連携)。
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