この記事の要点
- 「AIで何ができるか」ではなく「経営の目標のために何を変えるか」から考える
- 小さな範囲で試し、現場の人と一緒に使い方を決める
- 精度が完全でなくても、人の確認を組み込み、運用しながら直し続ける
AIの導入がうまくいくかどうかは、使う技術の新しさよりも、考え方と進め方で決まる部分が大きいものです。うまくいく会社には、経営の目標から逆算する、小さく試す、現場を巻き込む、運用しながら直し続ける、という4つの共通点があります。
うまくいかないのはどんな形か
目的があいまいなまま始める、現場の声を聞かずに決める、最初から完全な精度を求める、の3つがよく見られる形です。
- 目的があいまい:「ほかの会社も使っているから」とツールを入れること自体が目標になり、何がよくなったのかを測れない
- 現場の声を聞かない:経営や情報システムの部門だけで決め、実際の業務に合わない仕組みになって使われなくなる
- 完全な精度を求める:AIの結果に誤りがあることを理由に、試す前に止まってしまう、あるいは導入した後に「使えない」と判断して終わる
逆にいえば、3つの形を避ける進め方が、うまくいく会社の共通点になります。
共通点1:経営の目標から逆算する
うまくいく会社は「AIで何ができるか」ではなく、「経営の目標のために、どの業務の何を変えるか」から考えます。
たとえば、検査の担当者が足りず、品質の維持が難しくなっている製造業なら、「検査の見落としを減らし、経験の浅い人でも同じ水準で検査できるようにする」が目標になります。目標が決まれば、画像の認識を使うのか、検査の手順の見直しが先なのか、という手段の選び方も決まります。
目標から逆算すると、効果を測る物差しも決まります。見落としの件数、検査にかかる時間、手直しの件数など、前と後で比べられる指標を最初に決めておくと、続けるか、広げるか、やめるかを判断しやすくなります。
経営の目標から逆算すると決まること
- 経営の目標目標のために、どの業務の何を変えるかから考えます
- 手段目標が決まれば、手段の選び方も決まります
- 物差し目標から逆算すると、効果を測る物差しも決まります
- 判断物差しを最初に決めておくと、続けるか、広げるか、やめるかを判断しやすくなります
製造業の例では、目標は「検査の見落としを減らす」こと、物差しは見落としの件数や検査にかかる時間などです
共通点2:小さく試す
いきなり全社に広げず、1つの部門の1つの業務に絞って試します。
たとえば、社内の問い合わせのうち、件数の多い質問にだけ答えるチャットボットから始める、という使い方があります。範囲が小さければ、費用も、うまくいかなかったときの影響も小さく、何を直せばよいかも見えやすくなります。中小企業での始め方は中小企業のAI導入は、何から始めてどう広げるかで説明しています。
試すときは、期間と判断の基準を先に決めます。「決めた期間で、問い合わせへの返信が早くなれば、ほかの部門にも広げる」のように決めておくと、試しっぱなしになりません。
共通点3:現場を巻き込む
AIを毎日使うのは現場の人なので、課題の洗い出しから使い方の決定まで、現場の人に加わってもらいます。
現場の人は、どの作業に時間がかかっているのか、どこで例外が起きるのかを知っています。現場の知識がないまま作った仕組みは、実際の業務とずれて使われなくなりがちです。
- 試す業務を選ぶ段階から、担当の人に話を聞く
- 試している間に、使いにくい点や誤りを集める窓口を作る
- AIに任せる作業と、人が確かめる作業の境目を、現場と一緒に決める
現場の負担が一時的に増えることも、先に伝えておきます。試す期間は、AIの結果の確認や、うまくいかない点の記録に手間がかかります。その手間を見込んで業務の量を調整しておくと、試行が途中で止まりにくくなります。
現場の人が「面倒な作業を肩代わりしてくれる」と感じられれば、ほかの部門へ広げるときの後押しになります。社員がAIを使いこなすための学び直しは、AI時代のリスキリングで身につけたい3つの力と、会社の支え方で取り上げています。
共通点4:運用しながら直し続ける
AIは導入して終わりではありません。使いながら誤りを見つけ、直し続ける前提で仕組みを作ります。
たとえば、請求書の読み取りにAIを使う場合、読み取れなかった項目や誤った項目を人が直し、その記録をもとに設定や学習のデータを見直す、という流れを業務に組み込みます。誤りの傾向が分かれば、読み取りの前の書類の整え方や、確認の手順も改善できます。
運用しながら直し続ける流れ(請求書の読み取りの例)
- AIが読み取る請求書の読み取りにAIを使います
- 人が直す読み取れなかった項目や誤った項目を、人が直します
- 見直す直した記録をもとに、設定や学習のデータを見直します
- 改善する誤りの傾向から、書類の整え方や確認の手順も改善できます
この流れを、業務に組み込みます
精度が完全でなくても、人の確認と組み合わせて作業の負担が減るなら、使う価値があります。大切なのは、誤りがあったときにだれが気づき、どう直すかを先に決めておくことです。
運用の担当を決めておくことも欠かせません。導入を進めた人が異動したり、外部の開発会社との契約が終わったりすると、設定の見直しが止まり、少しずつ使われなくなることがあります。だれが結果を見て、だれが直すのかを、業務の分担として決めておきます。
4つの共通点の根にあるもの
4つの共通点は、AIの導入を技術の問題ではなく、業務と組織をどう変えるかという経営の課題として扱っている、という点でつながっています。
AIを入れるだけでは業務はよくなりません。どの業務をどう変えるかを経営の目標から決め、現場と一緒に試し、運用の中で直す。その積み重ねが成果につながります。
当社のご支援
当社のAI・DXコンサルティングでは、経営の目標から逆算して、どの業務にAIを使うか、どの順番で進めるかを一緒に決めます。試す段階から運用までを現場で進めたい場合は、お客様の現場に入り、要件定義から開発・運用までを担うFDEの形でもお手伝いします。関わり方の全体は関わり方をご覧ください。
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