この記事の要点
- バックオフィスでのAIは、下書きをつくる、照らし合わせる、探す、の3つの役割で使うと考えやすくなります
- お金や記録にかかわる業務では、AIの結果は候補として扱い、人が確かめて確定する手順を残します
- 書類の保存には電子帳簿保存法などの決まりがあるため、国税庁の資料と専門家の助言で確かめます
経理・総務などのバックオフィスでは、AIに「下書きをつくる」「照らし合わせる」「探す」の3つを任せ、人が確かめて確定する、という分け方で使うと始めやすくなります。仕訳の候補づくり、経費の確認、社内の問い合わせ、書類の整理、規程の検索が、使いどころの例です。
お金や会社の記録にかかわる業務は、誤りの影響が大きくなります。この記事では、使いどころとあわせて、人が確かめる手順の組み込み方を説明します。
バックオフィスのどこにAIを使えますか
同じ形の作業がくり返し発生し、確かめる基準がはっきりしている作業から使えます。代表的な5つを紹介します。
仕訳の候補をつくる
取引の内容から、勘定科目や摘要の候補を出させる使い方です。過去の仕訳の傾向をもとに候補を出し、担当者が確かめて登録します。いまお使いの会計のソフトやサービスに、候補を出す機能があるかを先に確かめると、新しく仕組みを用意しなくて済む場合があります。
経費の申請を確かめる
経費の申請と領収書の内容を、社内の規程と照らし合わせる使い方です。金額の上限を上回っていないか、必要な添付があるか、同じ領収書で二度申請されていないか、といった点をAIが確かめ、気になる申請に印をつけます。認めるかどうかを決めるのは、担当者です。
社内の問い合わせに答える
「経費精算の締め日は」「振込の手続きは」といった、規程や手順書に答えが書いてある質問に、AIが一次対応する使い方です。仕組みと作り方は、社内の問い合わせ対応をAIチャットボットに任せるにはで説明しています。
書類を整理する
請求書、見積書、契約書などを、種類・取引先・日付で振り分け、決まった名前を付けて保存する使い方です。紙やPDFの書類から項目を読み取る仕組みはAI-OCRと呼ばれます。請求書の読み取りの進め方は、請求書・注文書の読み取りを自動にするときの進め方で取り上げています。
規程や過去の資料を探す
経理規程、稟議の基準、過去の処理の記録などから、知りたいことが書いてある箇所を探させる使い方です。社内の文書を検索して答えを作らせる仕組みはRAG(検索拡張生成)と呼ばれ、答えと一緒に根拠の文書を示させることができます。
バックオフィスでのAIの使いどころと、人の役割
- 仕訳の候補AIが勘定科目や摘要の候補を出し、担当者が確かめて登録する
- 経費の確認AIが規程と照らして気になる申請に印をつけ、認めるかは担当者が決める
- 社内の問い合わせ規程や手順書に答えがある質問に、AIが一次対応する
- 書類の整理AIが種類・取引先・日付で振り分け、決まった名前を付けて保存する
- 規程の検索AIが知りたいことが書いてある箇所を探し、根拠の文書を示す
AIには下書き・照合・検索を任せ、確定は人が行います
人が確かめる手順は、どう組み込みますか
AIの結果は「候補」として扱い、確定は人が行う、という手順を業務の流れの中に残します。AIは、それらしい答えを作るのが得意な一方で、誤りを含むことがあるためです。
組み込むときは、次の点を決めておきます。
- AIの結果を確かめる人と、確定する人(承認の手順はいまの業務のものを残す)
- AIが自信を持てなかったもの、金額が大きいもの、初めての取引先など、人が丁寧に見る条件
- AIの結果と、人が直した内容の記録の残し方
- 月末などに、まとめて照らし合わせる確認(帳簿と銀行の明細の照合など)
取引先や科目の名前は、会社で登録している一覧(マスターデータ)と照らし合わせると、表記の揺れによる誤りに気づきやすくなります。人が直した内容を記録しておくと、AIがどこで誤りやすいかが分かり、設定や手順を直すきっかけになります。
入力してよい情報は、どう決めますか
会社の利用ルールで認めたサービスに、認めた範囲の情報だけを入力します。経理のデータには、取引先との条件、従業員の給与や口座、個人の経費の内容など、外に出してはいけない情報が多く含まれます。
入力した内容がサービスの提供者のAIの学習に使われない設定や契約になっているかも、あわせて確かめます。社内のルールの作り方は社内の生成AIの利用ルールの作り方で説明しています。
書類の保存の決まりとインボイス制度
書類をAIで整理するときは、税の決まりに沿った保存の仕方もあわせて決めておきます。
電子帳簿保存法では、帳簿や書類を電子で保存するときの決まりを、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存などに分けて定めています。国税庁の説明では、電子帳簿等保存とスキャナ保存は使うかどうかを選べる制度とされている一方、請求書などを電子でやり取りした場合(電子取引)は、一定の要件のもとで、そのデータを保存しなければならないとされています。
インボイス制度の適格請求書発行事業者の登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確かめられます。保存の要件や制度の細かな点は、国税庁の資料で確かめ、顧問の税理士などの専門家にご相談ください。
どこから始めればよいですか
件数が多く、確かめる基準がはっきりしている作業から始めます。たとえば、毎月決まって届く請求書の整理や、規程の検索のように、誤りがあっても人の確認で気づきやすい作業です。
始める前に、その作業に毎月どのくらいの時間がかかっているかを測っておくと、AIを使った後と比べられます。いまの会計や経費精算のサービスに備わっている機能で足りるか、業務に合わせた仕組みが要るかも、この段階で見きわめます。
当社のご支援
当社のAI開発の例には、注文書を読み取って基幹システムへつなぎ、人は確認を受け持つ形にした帳票読み取りAIを載せています。いまお使いの会計や業務のシステムとAIをつなぐご相談はAIインテグレーション、どの業務から手をつけるかを決めるところからのご相談はAI・DXコンサルティングをご覧ください。まず少しずつ相談したい場合は、月20時間から使えるAIタイムシェアもあります。
- 経理
- バックオフィス
- 業務の効率化
- 生成AI
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 法令
電子帳簿保存法 第4条(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
一貫して電子計算機で作成した帳簿や書類は、電磁的記録で保存できます。紙の書類も、財務省令で定める装置で記録し、定められた要件に沿って保存すれば、電磁的記録の保存に代えられます(第3項。スキャナ保存と呼ばれます)。
- 法令
電子帳簿保存法 第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
所得税と法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合、その取引情報の電磁的記録を、財務省令の定めに沿って保存しなければなりません。
- 法令
消費税法 第57条の2(適格請求書発行事業者の登録等)
適格請求書を交付しようとする事業者は、税務署長の登録を受けられます。登録は、登録番号などを適格請求書発行事業者登録簿に載せて行い、その事項は公表されます(第4項)。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
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