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需要予測で在庫と発注を見直す

需要予測を在庫と発注に生かすには、予測の値をそのまま発注量にせず、予測の誤差を見込んだ安全在庫と発注の決まりに組み込み、予測と実績を比べて定期的に見直します。使うデータ、誤差の扱い、発注への組み込み方を説明します。

この記事の要点

  • 予測は外れる前提で、品目ごとに誤差の大きさを測り、安全在庫の考え方に生かす
  • 発注量は、次の納品までの予測・安全在庫・いまの在庫と発注済みの数から考え、担当者が直せる形で示す
  • 予測と実績、担当者が直した結果を定期的に比べ、予測と在庫の決まりの両方を見直す

需要予測を在庫と発注の見直しに生かすには、予測の値をそのまま発注量にするのではなく、予測の誤差を見込んだ安全在庫と、いつ・いくつ発注するかの決まりに組み込みます。そのうえで、予測と実績を定期的に比べ、予測の仕組みと在庫の決まりの両方を直していきます。

需要予測とは、過去の販売の実績や季節・天気などの条件をもとに、将来どのくらい売れるか、使われるかを予測することです。経営の判断にデータを使う考え方はデータにもとづく経営とAIの役割分担で扱っています。この記事では、在庫と発注の実務に絞って説明します。

需要予測が在庫と発注にどうつながるか

発注とは、次の商品が届くまでの間に売れる量を見込んで、足りない分を頼むことです。見込みが少なすぎれば欠品が起き、多すぎれば在庫を持ちすぎて、保管の費用や売れ残りが増えます。

担当者の経験による見込みは、慣れた品目では頼りになる一方、品目が多いと手が回らず、担当者によって判断が揺れます。需要予測を使うと、すべての品目について同じ考え方で見込みを出し、担当者は判断が要る品目に時間を使えるようになります。

予測に使うデータ

予測の材料は、販売や出荷の実績を中心に、需要を動かす条件を組み合わせます。

  • 実績:品目・拠点・日ごとの販売や出荷の数
  • 暦:曜日、祝日、季節、月末などの区切り
  • 売り方:販促、値引き、価格の改定、店頭での扱い
  • 外の条件:天気や気温、地域の催し
  • 取引先の予定:受注の見込みや内示
  • 商品の情報:新商品の発売、取り扱いの終了

見落としやすいのが、欠品していた期間の実績です。欠品中は、売れた数が本当の需要より少なく記録されます。そのまま学習に使うと、予測が少なめに偏るため、欠品の記録を残して扱いを分けます。品目の名前や単位が拠点ごとに揺れていると集計がずれるため、マスターデータの整備もあわせて進めます。

予測の誤差を測る

予測は外れる前提で使います。大切なのは、品目ごとに、どのくらい外れるかを数えておくことです。

過去の予測と実績の差を品目ごとに記録すると、よく当たる品目と外れやすい品目、いつも多めに出る、少なめに出るといった偏りが見えてきます。売れ行きが安定した定番の品目は誤差が小さく、少量しか売れない品目や季節で大きく動く品目は誤差が大きくなりやすい傾向があります。誤差の大きさが分かれば、どの品目を予測に任せ、どの品目で人が判断するかを分けられます。

安全在庫の考え方

安全在庫とは、予測の外れや納品の遅れに備えて、見込みより多めに持っておく在庫です。

安全在庫の量は、主に次の3つで決まります。予測の誤差のばらつきが大きいほど、発注してから届くまでの期間(リードタイム)が長いほど、欠品を許さない度合いが高いほど、多く持つ必要があります。需要予測の精度が上がって誤差が小さくなれば、同じ欠品の少なさを保ったまま、安全在庫を減らせる余地が生まれます。予測が在庫の削減につながるのは、この仕組みによるものです。

欠品をどこまで許すかは、品目の重要さで変えます。欠品が取引先に大きな影響を与える品目と、代わりの品目がある品目とを、同じ基準で扱う必要はありません。この判断は、営業や購買の担当者と一緒に決めます。

発注の判断に組み込む

発注量は、次の納品までの需要の予測に安全在庫を足し、いまの在庫と発注済みでまだ届いていない数を引く、という考え方が一例です。予測の対象は、次の納品までの期間と、その次の発注までの期間を合わせたものにします。

計算した数は、発注の単位、最低の発注量、保管の場所、賞味期限や使用期限などで調整します。こうした決まりも、品目ごとにシステムに持たせておきます。

予測と計算した発注量は、担当者の画面に示し、担当者が直したうえで確定する形から始めます。担当者が直したときは、理由(販促の予定を知っていた、取引先から連絡があった、など)を記録しておくと、予測に足りない材料が見えてきます。

発注量考え方の一例
=
需要の予測次の納品までと、その次の発注までの期間
安全在庫予測の外れや納品の遅れへの備え
いまの在庫と発注済みの数発注済みは、まだ届いていない分

計算した数は、発注の単位・最低の発注量・保管の場所・期限などで調整し、担当者が直したうえで確定する形から始めます

定期的に見直す

予測の仕組みも在庫の決まりも、作ったときのままでは合わなくなるため、定期的に見直します。

  • 予測と実績の差を、品目ごとに毎月などの決まった間隔で確かめる
  • 担当者が直した発注と、予測どおりの発注のどちらが実績に近かったかを比べる
  • 取引先の変化や価格の改定など、傾向が変わったときは学び直す
  • 誤差の変化に合わせて、安全在庫と発注の決まりを直す

新商品や、過去にない出来事が起きたときは、過去のデータが当てはまりません。似た商品の実績を参考にしつつ、人の判断を中心に置きます。予測の仕組みを直し続ける運用は、つくったAIを直し続ける運用(LLMOps)の考え方も参考になります。

小さく始める

対象を絞り、過去のデータで試してから、いまの発注と並べて使う順で進めます。

はじめに、売上や在庫の金額が大きく、実績のデータがそろっている品目に絞ります。次に、過去のある時点で予測していたらどうなったかを計算し、実績と比べます(バックテスト)。そのうえで、一定の期間は担当者の発注と予測にもとづく発注を並べて比べ、欠品と在庫の量がどう変わるかを確かめてから、任せる範囲を広げます。

当社のご支援

当社のAI開発の例では、物流・倉庫業の需要予測の例を紹介しています。翌週・翌月の出荷量の見込みが経験のある方の勘に頼っていた業務で、主な品目の出荷量を毎朝予測して画面に表示し、荷主の方も専用の画面で確認できるようにしたもので、クラウドで毎日自動で更新し、使いながら精度を高め、対象の品目を広げていけます。予測の仕組みづくりはソリューション提供、在庫や販売管理のシステムとのつなぎ込みはAIインテグレーションで承ります。どの業務から手をつけるかの整理はAI・DXコンサルティングをご覧ください。

  • 需要予測
  • 在庫管理
  • 発注
  • 機械学習

この記事に出てくる用語

この記事を書いた人

石田 誠 フロレンティナ 取締役CTO

インターネットの黎明期から、ホスティング事業の立ち上げや、インフラ・セキュリティのプロジェクトに携わってきました。現在は、AWS・Azure へのクラウド移行の支援と、業務アプリケーションの要件定義から実装までを担っています。

このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。

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