AI AT WORK

配車計画・シフト作成をAIで組むときの進め方

配車計画やシフト作成は、条件を満たす組み合わせを探す仕事で、数理計画法などの手法で案をつくり、機械学習の予測で入力を補う形が基本です。条件の洗い出し、人の調整の残し方、段階的な進め方を説明します。

この記事の要点

  • 配車やシフトは組み合わせを探す仕事で、案をつくるのは数理計画法など、量や時間の見込みは機械学習が受け持つ
  • 守らなければならない条件と、できれば守りたい条件を分けて洗い出すことが、計画の出来を左右する
  • AIは案をつくり、人が確かめて直し、承認する形から始め、段階的に任せる範囲を広げる

配車計画やシフト作成をAIで組むときは、「条件を満たす組み合わせを探す」仕事として捉え、数理計画法などの手法で案をつくり、機械学習による荷量や来客数の予測で入力を補う形が基本です。うまく進めるには、条件(制約)を漏れなく洗い出すこと、人が確かめて直す場面を残すこと、段階的に任せる範囲を広げることが要になります。

配車とシフトは「組み合わせ」の仕事

配車計画とは、どの車両が、どの順番で、どの届け先を回るかを決めることです。シフト作成とは、どの日のどの時間帯に、だれが働くかを決めることです。どちらも、多くの条件を同時に満たす組み合わせを探す仕事です。

車両や届け先、働く人が増えると、組み合わせの数は急に増えます。経験のある担当者は、頭の中にある条件と勘で、よい組み合わせを手早く見つけています。一方で、担当者が休むと計画が組めない、条件の確認に時間がかかる、といった悩みも生まれます。

数理計画法と機械学習の違い

計画の案をつくるのは数理計画法などの手法で、機械学習は計画の材料になる見込みをつくる役を受け持ちます。

数理計画法とは、守るべき条件と、よくしたいこと(目的)を数式で表し、条件を満たす組み合わせの中から、目的に照らしてよい案を計算で探す手法です。機械学習とは、過去のデータから傾向を学び、先の量や時間を予測する手法です。

観点数理計画法など機械学習
得意なこと条件を満たす組み合わせを探す過去の傾向から量や時間を予測する
必要なもの条件と目的の正確な書き出し過去の実績のデータ
配車・シフトでの役割計画の案をつくる荷量・来客数・所要時間を見込む

たとえば、機械学習で翌日の荷量や店舗の来客数を予測し、その予測をもとに数理計画法で配車やシフトの案をつくり、担当者が確かめて承認する、という組み合わせです。予測の進め方は需要予測で在庫と発注を見直すで取り上げています。

配車・シフトでの、機械学習と数理計画法の役割

見込みをつくる

過去の実績のデータ
機械学習で予測する
翌日の荷量・店舗の来客数

案をつくる

予測と、条件・目的
数理計画法などで探す
配車やシフトの案
  • 担当者が確かめて承認する

案をつくるのは数理計画法など、見込みをつくるのは機械学習です

生成AIは、条件を文章から書き出す手伝いや、できた案の理由を説明する文章づくりには使えます。ただ、多くの条件をもれなく守らせる計算そのものは、条件を確かめられる手法に任せるほうが、結果を検証しやすくなります。生成AIとこれまでのAIの違いは、生成AIと、これまでのAI(予測・分類)の違いをご覧ください。

条件(制約)を洗い出す

計画の出来は、条件をどれだけ正確に書き出せるかで決まります。条件は、守らなければならないものと、できれば守りたいものに分けます。

守らなければならない条件とは、破ると計画が使えなくなるものです。配車では、車両の積める重さと大きさ、車高や重量による道路の制約、届け先の受け取りの時間帯、運転者の労働時間などが当たります。シフトでは、時間帯ごとに要る人数と技能、労働時間・休憩・休日の決まり、就業規則などが当たります。

できれば守りたい条件とは、満たすほど計画がよくなるものです。本人の希望の休み、勤務の偏りを減らすこと、同じ届け先には慣れた運転者を当てること、などが当たります。できれば守りたい条件どうしがぶつかるときに備えて、どれを優先するかの順番や重みを決めておきます。

条件(制約)は2つに分けて洗い出す

  • 守らなければならない条件破ると計画が使えなくなるもの(積める重さ、受け取りの時間帯、労働時間など)
  • できれば守りたい条件満たすほど計画がよくなるもの(希望の休み、勤務の偏りを減らすことなど)

できれば守りたい条件どうしがぶつかるときに備えて、優先の順番や重みを決めておきます

法令の決まりを条件に入れる

労働時間・休憩・休日は、労働基準法に定めがあります(第32条〔労働時間〕・第34条〔休憩〕・第35条〔休日〕)。トラックの運転者には、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が、拘束時間・休息期間・運転時間・連続運転時間を定めており、2022年12月の見直しを経て、2024年4月1日から改正後の基準が施行されています。

計画のシステムに条件として入れる値は、就業規則や労使の協定によっても変わります。社内の労務の担当者と、社会保険労務士などの専門家に確かめてから設定してください。

出典:労働基準法(e-Gov法令検索)
トラック運転者の改善基準告示(厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)

頭の中にある条件を見つける

書かれていない条件は、担当者への聞き取りと、過去の計画との比べ合わせで見つけます。「この届け先は午前中に回る」「この二人は同じ時間帯に入れない」のような条件は、手順書には書かれていないことがよくあります。AIの案を担当者に見てもらい、「この案は使えない」と言われた理由を一つずつ条件に足していくと、抜けが埋まっていきます。

何をよくするかを決める

目的とは、条件を満たす案の中で、何を基準によい案とするかです。配車では、走る距離、使う車両の台数、残業の時間など、シフトでは、人件費、希望の反映、勤務の偏りの少なさなどがあります。

目的どうしはぶつかることがあります。走る距離を短くすると車両の台数が増える、希望を多く通すと人の偏りが出る、といった具合です。どれをどれだけ重く見るかは、現場だけでなく、経営の数字と結びつけて決めます。

人の調整を残す

AIが案をつくり、担当者が確かめて直し、承認して確定する形にします。

当日の急な欠勤や追加の注文、道路の状況など、計画を組んだ後に起きる変化はなくなりません。担当者が案を手で直せること、直した後に条件を破っていないかをシステムが確かめられること、変化に応じて組み直せることを、最初から仕組みに入れておきます。案ごとに、なぜその割り当てになったのかを示せると、現場の納得も得やすくなります。

段階的に進める

いきなりAIの計画に切り替えず、比べる・試す・任せるの順で広げます。

  1. いまの計画の作り方と、使っている条件を書き出す
  2. 過去のデータでAIに案をつくらせ、担当者がつくった計画と比べる
  3. 一部の拠点や期間で、担当者が確かめながら使う
  4. 承認の形に移し、倉庫や勤怠などのシステムとつなぐ
  5. 条件の変化を反映し、使い続けながら直す

手順2で、担当者の計画より劣る点が見つかれば、多くは条件の書き漏れです。条件を足して比べ直すことをくり返すと、使える計画に近づきます。

当社のご支援

当社のAI開発の例では、食品物流(低温物流)の配車計画の例を紹介しています。車高・重量など道路の制約を人が確かめながら配車していた業務で、AIが配車計画をつくり、担当の方は承認するだけで済む形にしたもので、重量・車高・時間帯の制約に対応し、倉庫のシステムとも連携できます。業務に合わせた開発はソリューション提供、いまのシステムとのつなぎ込みはAIインテグレーションで承ります。まず条件の整理から相談したい場合は、月20時間から使えるAIタイムシェアもご利用いただけます。

  • 配車計画
  • シフト作成
  • 数理計画法
  • 機械学習

この記事に出てくる用語

この記事を書いた人

石田 誠 フロレンティナ 取締役CTO

インターネットの黎明期から、ホスティング事業の立ち上げや、インフラ・セキュリティのプロジェクトに携わってきました。現在は、AWS・Azure へのクラウド移行の支援と、業務アプリケーションの要件定義から実装までを担っています。

このコラムは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の状況への助言ではありません。製品・サービスの名前と内容は、記事の更新日の時点のものです。

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