この記事の要点
- 請負は仕事の完成に対して、準委任は事務の処理に対して報酬を払う契約で、完成の義務の有無が大きな違いです
- 準委任にも、履行の期間や時間に払う形と、成果に払う形(民法648条の2)があります
- 契約の名前ではなく実態で判断されるため、発注者が受注者の技術者に直接指示を出すと偽装請負とされるおそれがあります
システム開発の契約では、請負契約と準委任契約のどちらか、または両方を工程ごとに使い分けるのが一般的です。大きな違いは、請負では「仕事の完成」が約束の中身になり、準委任では「事務の処理」が約束の中身になる点です。
違いは、報酬を払う時期、引き渡したものに不具合があったときの責任、途中で終わったときの扱いにも表れます。民法の条文に沿って整理します。条文は、2026年10月時点で e-Gov 法令検索に掲載されている民法で確かめています。
請負契約とは
請負契約とは、受注者が仕事を完成させることを約束し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を払う契約です。民法632条は、請負を、当事者の一方が「ある仕事を完成することを約し」、相手方がその結果に対して報酬を支払うことを約する契約と定めています。
システム開発では、決めた仕様のとおりに動くシステムを作って引き渡すことが、仕事の完成に当たります。報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に払うのが原則です(633条)。
準委任契約とは
準委任契約とは、法律行為ではない事務の処理を相手に任せる契約です。643条の委任は法律行為を任せる契約で、656条が、委任の規定を「法律行為でない事務の委託」に準用すると定めています。要件定義の支援、システムの運用、技術的な助言などは、準委任で結ばれることが多い仕事です。
準委任の受注者は、仕事の完成の義務は負いませんが、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負います(644条)。専門家として求められる水準の注意を払って仕事を進める義務、と考えると分かりやすいでしょう。
期間や時間に払う形と、成果に払う形
準委任の報酬には、2つの形があります。1つは、事務を履行した後に、または期間を決めてその期間ごとに払う形です(648条)。もう1つは、事務の履行によって得られる成果に対して払う形で、2020年4月に施行された改正民法で648条の2として設けられました。
成果に払う形で、成果の引渡しが要る場合は、報酬は成果の引渡しと同時に払います(648条の2第1項)。成果に払う形でも、請負のような仕事の完成の義務を負うわけではない、と説明されるのが一般的です。
5つの点で比べる
請負と準委任の違いは、次の表のように整理できます。
| 比べる点 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 約束の中身 | 仕事の完成(632条) | 事務の処理(643条・656条) |
| 受注者の主な義務 | 仕事を完成させて引き渡す | 善良な管理者の注意で事務を処理する(644条) |
| 報酬 | 目的物の引渡しと同時(633条) | 履行の後、または期間ごと(648条)。成果に払う形もある(648条の2) |
| 不具合があったとき | 契約不適合責任を負う | 完成の責任はないが、注意の義務を果たしていなければ責任を問われることがある |
| 途中でやめるとき | 完成前は、発注者が損害を賠償して解除できる(641条) | 各当事者がいつでも解除できる。相手に不利な時期の解除などは損害の賠償が要る(651条) |
契約不適合責任
契約不適合責任とは、引き渡したものが種類・品質・数量について契約の内容に合っていない場合に、受注者が負う責任です。改正前の民法では「瑕疵担保責任」と呼ばれていた仕組みを、改正で整理し直したものです。
請負には、有償契約への準用の規定(559条)により、売買の規定が準用されます。そのため発注者は、562条以下の規定にもとづき、修補などの履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除を求められます。
ただし、注文者が不適合を知った時から1年以内に、その旨を請負人に通知しないと、これらを求められなくなります(637条第1項)。引き渡した時に請負人が不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は、この期間の制限は適用されません(同条第2項)。
システム開発の契約書では、責任を負う期間や範囲を別に定めることが多く、民法の定めと違う内容になっていることもあります。検収の手順とあわせて、契約書の条項を確かめておきます。
請負の契約不適合責任:不適合を知ってからの通知(民法637条)
引き渡した時に請負人が不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は、この期間の制限は適用されません。契約書で責任を負う期間や範囲を別に定めることも多いため、契約書の条項を確かめます。※ 個別の判断は専門家にご確認ください
途中で終わったときの報酬
請負でも準委任でも、途中で終わった場合に、それまでの分の報酬を請求できることがあります。
請負では、発注者の責めに帰することができない事由で完成できなくなった場合や、完成前に解除された場合に、すでにした仕事のうち分けられる部分で発注者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなし、利益の割合に応じて報酬を請求できます(634条)。
準委任では、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや、履行の途中で終了したときに、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます(648条第3項)。成果に払う形の準委任には、634条が準用されます(648条の2第2項)。
工程ごとに使い分ける
システム開発では、すべての工程を1つの契約の形で結ぶのではなく、工程ごとに契約の形を分ける考え方が広く使われています。
たとえば、要件定義のように発注者と一緒に中身を決める工程は準委任、仕様が固まった後の設計・開発・テストは請負、稼働後の運用は準委任、という分け方です。IPA(情報処理推進機構)は、工程ごとの契約の考え方とモデル契約書をまとめた「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しており、第二版(2020年12月22日公開)は改正民法への対応を反映しています。
工程ごとに契約の形を分ける例
分け方の一例です。IPAの「情報システム・モデル取引・契約書」が、工程ごとの契約の考え方をまとめています。※ 個別の判断は専門家にご確認ください
作りながら中身を決めるアジャイル開発については、IPA が準委任契約を前提とした「アジャイル開発版」(2020年3月31日公開)を出しています。進め方の違いはアジャイル開発とウォーターフォール開発の違いで説明しています。
出典:情報システム・モデル取引・契約書(第二版)(IPA)
情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)(IPA)
偽装請負に注意する
偽装請負とは、契約は請負や準委任の形なのに、実際には発注者が受注者の技術者に直接、具体的な作業の指示を出して働かせている状態です。実態が労働者派遣に当たると判断されると、労働者派遣法に反するおそれがあります。
厚生労働省は、労働者派遣と請負を区分する基準(昭和61年労働省告示第37号)を定めています。基準に関する疑義応答集では、どちらに当たるかは契約の形式ではなく、実態に即して判断されると説明されています。準委任や業務委託の名前で契約していても、同じように実態で判断されます。
実務では、作業の指示は受注者の責任者を通して出す、発注者の担当者が受注者の技術者の勤務の時間や作業の割り振りを直接管理しない、といった点に気をつけます。アジャイル開発のように発注者と受注者が近い距離で協働する場合も、IPA のアジャイル開発版のページでは、厚生労働省の疑義応答集を参考にするよう案内しています。
出典:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(厚生労働省)
契約の前に確かめておきたいこと
契約書を交わす前に、次の点を発注者と受注者で確かめておくと、後の食い違いを減らせます。
- 工程ごとに、請負か準委任か。準委任なら、期間や時間に払うか、成果に払うか
- 完成や成果を、何をもって確かめるか(検収の基準と手順)
- 不具合の責任を負う期間と範囲
- 途中で終わった場合の報酬の扱い
- 作業の指示の出し方と、窓口になる責任者
- 成果物の著作権などの権利がどちらに帰属するか
本記事は、契約の形の違いを一般的に整理したものです。個別の契約書の内容や判断については、弁護士などの専門家にご相談ください。
当社のご支援
当社の現場に入るFDEは準委任契約で、技術者がお客様の現場に入り、要件定義から開発・運用までを担います。範囲を決めて開発する場合は、プロジェクトとしてお見積りします。どの関わり方が合うかは関わり方をご覧のうえ、お問い合わせからご相談ください。
- 請負契約
- 準委任契約
- 民法
- 偽装請負
この記事に出てくる用語
関連する法令・指針(参考情報)
- 法令
民法 第632条(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。
- 法令
民法 第656条(準委任)
委任の規定は、法律行為でない事務の委託にも準用されます。これを準委任と呼び、業務を行うこと自体を約束するシステムの開発支援や運用などの契約が、準委任にあたることがあります。
- 法令
民法 第648条の2(成果等に対する報酬)
事務の履行によって得られる成果に報酬を払うと約束した場合、成果の引渡しが要るときは、報酬は成果の引渡しと同時に支払います。この場合には、第634条(利益の割合に応じた報酬)が準用されます。
- 指針
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書」(第二版(2020年12月22日))
情報システムの受託開発(一部の企画を含む)と保守運用の取引について、モデル契約と解説をまとめた資料です。民法の改正に直接関係する論点と、それ以外の論点の両方を見直しています。
- 指針
厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」(2026年5月25日更新)
37号告示の当てはめ方を、問いと答えの形で示した資料です。労働者派遣と請負のどちらにあたるかは、契約の形式ではなく、実態に即して判断されると説明しています。
法令は2026年10月21日時点の内容です。要旨は当社がまとめたもので、条文・判決・指針の全文ではありません。個別の事案への当てはめは、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。表記の決まりは法令・指針の参考情報と凡例をご覧ください。
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