この記事の要点
- 生成的なデザインは、人が目的と条件を決め、計算で多くの案を作って比べる手法
- 日照・風通しの検討では、シミュレーションと機械学習による速い予測の使い分けが見られる
- 案を選び、空間の質や暮らし方を考えて決めるのは設計者の役割
建築設計では、日照や風通しなどの環境のシミュレーションを速く回し、多くの案を比べるために、AIや計算の技術が使われ始めています。AIが設計者の代わりに建物を決めるのではなく、設計者が条件を決め、計算で出た案を比べて選ぶ、という使い方が中心です。
建築は、見た目の美しさと同時に、構造、法規、光や風、熱といった多くの条件を満たす必要があります。条件どうしがぶつかることも多く、これまでは設計者の経験に頼る部分が大きい領域でした。
生成的なデザインとは
生成的なデザイン(ジェネレーティブデザイン)とは、人が目的と制約の条件を決め、コンピューターがその条件の中で多くの案を作り、評価して並べる設計の手法です。
- 人が条件を決める:「居間に冬の日差しを長く入れたい」「夏に外の風を室内に通したい」「建ぺい率・容積率の範囲に収める」など、目標と守るべき決まりを設定する
- 計算で案を作る:建物の形、窓の位置や大きさ、配置などを変えながら多くの案を作り、それぞれをシミュレーションで評価する
- 人が選ぶ:評価の結果を比べ、使い勝手や美しさ、費用もふまえて案を選び、磨いていく
生成的なデザインには、機械学習を使わない計算の手法も多く含まれます。案を作るプログラムと、評価のためのシミュレーションの組み合わせが基本で、評価を速くするところなどに機械学習が使われ始めています。
日照と風通しの検討
日照は太陽の動きをもとにした計算で、風通しは数値流体力学(CFD)のシミュレーションで検討します。AIは、その結果を速く予測する役割で使われ始めています。
日照
敷地の緯度・経度と、季節・時刻から太陽の位置を計算し、建物や周りの建物の影、窓や壁に当たる日射の量を求めます。冬は部屋の奥まで日が入り、夏は軒や庇で直射日光を遮る、という両立を、形を変えながら確かめられます。
風通し
数値流体力学(CFD)とは、空気や水の流れをコンピューターで計算して予測する技術です。敷地の周りの風が建物にどう当たり、どの窓から入ってどこへ抜けるかを計算し、窓の配置や間取りを検討します。CFDは計算に時間がかかるため、設計の初めの段階で何度も回すのは負担になりがちでした。
機械学習による速い予測
CFDの負担を減らすために、詳しい解析の結果などを学習した機械学習のモデルで、結果を素早く予測する方法が使われ始めています。速い予測で案を絞り、詳しいシミュレーションで確かめる、という使い分けです。速い予測は方向をつかむためのもので、確認の代わりにはなりません。
速い予測と詳しいシミュレーションの使い分け
速い予測は方向をつかむためのもので、確認の代わりにはなりません
2026年10月時点で確かめた主なツール
設計の初期の配置や環境の検討、パラメトリックな設計、BIMの中での案の探索、のそれぞれにツールがあります。BIMとは、建物の形と、部材や仕様などの情報をまとめて扱う3次元のモデルと、その使い方のことです。
| ツール | 主な使い方 |
|---|---|
| Autodesk Forma Site Design | 敷地の初期の計画で、日照や風などを検討する。風の検討には、機械学習による速い予測(rapid wind)と、CFDによる詳しい解析がある |
| Ladybug Tools | Rhino の Grasshopper で使える、無料・オープンソースの環境解析のツール群。気候の分析、日射、採光、エネルギーの計算などに使う |
| Autodesk Revit の Generative Design | BIMのソフトの Revit の中で、目標と条件を決めて多くの案を作り、比べる機能(Revit LT では使えない) |
出典:Designing with Wind(Autodesk Forma ブログ、2026年7月)、Ladybug Tools、Generative Design(Revit 2026 ヘルプ)
ツールの名前や機能は更新で変わることがあります。使うときは、各社や開発元の最新の案内を確かめてください。
設計者の役割はどう変わるか
手で一つひとつ案を描いて確かめる時間が減り、条件の決め方と案の選び方、空間の質を考える仕事の比重が大きくなります。
- 何を目標にするか、どの条件を優先するかを決める
- 計算の前提(気象データ、周りの建物、部屋の使い方)が妥当かを確かめる
- 数値に表れない居心地や、街並みとの関係、使う人の暮らし方を考えて案を選ぶ
シミュレーションの結果は、置いた前提によって変わります。法規や構造の確認を含め、最後に判断するのは設計者と専門家です。AIで計算の手間が減るぶん、その空間で人がどう過ごすかを考える時間を増やせます。ほかの分野でのAIの動きは分野別のAIの活用の動きにまとめています。
当社のご支援
建築に限らず、シミュレーションや予測を業務に取り入れるときは、どの判断を速くしたいのかを先に決めることが出発点になります。当社のAI・DXコンサルティングでは、経営と業務の目標から、何にAIを使うかと進める順番を一緒に決めます。社内のデータやいまのシステムにつなぐ開発は、ソリューション提供とAIインテグレーションでお手伝いします。
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